【完】さつきあめ〜2nd〜
でも伏し目がちな瞳に、どこか憂いの感じられる人だった。
「驚いた?」
灰皿に煙草の灰を落とすゆりと目が合うと、彼女はうっすらと微笑んだ。
「どういう事ですか……?」
「どうもこうも、あなたが思った通りの事だと思うけど?
だから有明さんに会いにきたんじゃないの?違う?」
「そういう事を聞いてるんじゃなくて…!!」
「何?あたしの口から全部説明すれば満足?
あたしは皐月には行かない。七色グループを、朝日を裏切って、有明さんの新しいお店で働く。
それを全部事細かに説明しなきゃいけない程頭の悪い人だったかしら?」
「……何でそんな事……」
「何で?残酷な事を聞くのね………」
そう言ったゆりは煙草を灰皿に押し付けて、こちらを一瞥した後、天井にあるシャンデリアを見つめた。
ゆりの薄い茶色の瞳が光りに反射して、少しだけ濡れて見えて、不謹慎だけど、そんな姿さえ美しいと思ってしまった。
「その愛も得られないのに、その愛に尽くすような人間に見えた?」
「だって…ゆりさんはずっと朝日の為に七色グループで1番でいたんでしょ…?」
ふっと乾いた笑いを浮かべて、ゆりはもう一度わたしへと目を向けた。
「あなたって無意識で人を傷つけるのね…」
「……!!」
ゆりの言葉に、どくんと心臓が高鳴るのが分かった。