【完】さつきあめ〜2nd〜
わたし自身が1番自分の気持ちを否定して、大切にしてあげられなかった。
自分の気持ちを犠牲にしてまで、わたしが守りたかった物って。
1時間程度カフェに居て、わたしは涼と別れた。
別れ際、涼は言葉を選ぶようにわたしへ言った。
「別に全部嫌になったら逃げてもいいと思う」
やっぱり根本的な部分で涼は優しい人間なのだ。
「また、トリガーに飲みにこいよ。
美優とかはるなとか綾乃を連れてさ」
不器用な言葉に隠された優しさ。涼はいつものようにぶっきらぼうにわたしへ笑いかけた。
「ありがとう…」
「お前が重く考えてるほど誰も怒っちゃいねぇし
また前みたいに一緒に飲もうな」
その夜
やっぱり中々眠りにつけなかった。
ひとりぼっちの家に帰って、ベランダから灯っては消えるネオンの光りを見つめていた。
寂しい気持ち、切ない気持ちでいっぱいになる。
沢山のネオンの中にひとりひとりの生活があって、沢山の人々の孤独を癒すように灯りはともる。けど、いまはどうしてもこのネオンを見て、ひとりぼっちと感じてしまうのだ。
でも、ひとりだからこそ誰かと分け合える寂しさもある。
この世界で、この光りをひとりぼっちで見つめているのは、わたしだけじゃないはずだ。
だからこの孤独さえ抱きしめて眠る夜を、わたしはひとりぼっちだと思ってはいけないはずなんだ。