【完】さつきあめ〜2nd〜

3月の始まり。
この月にわたしは20歳になる。
大人になるという意味も分からないまま、年齢だけ無情にも重ねていってしまう。

それでも新しいわたしの始まりを、双葉で選んだ事を後悔はしないように時間を重ねて行かなくてはいけない義務がある。

「さくらちゃん、今日からよろしくね」

七色グループで唯一の和をイメージして作られた店内に
着物姿の由真が、長い髪をまとめて微笑みかける。
プライベートがどうあれ、由真はこのお店のママで、暗めに作られた店内に、彼女のベージュの着物がよく映えていた。
由真の座るソファーの後ろで白い胡蝶蘭が凛と咲き誇っていた。
内装やBGMひとつとっても、シーズンズともTHREEとも全く違う。お店を変わるたびに思うことは、その店ひとつひとつに独特のカラーがあって、その全てが朝日が拘って造り上げた物だということ。

「うちは、そんなに新規のお客様が多いって感じのお店でもないけど
お客さんがお客さんを連れてくるって感じだから、変な人がいない事は保障するわ。
それにあたしも一応指名って形になってるけど、キャストとして働くって言う感じじゃないの。だからあたしのお客さんでさくらちゃんを気に入れば、その人たちはさくらちゃんに任せたいって思ってる。
勿論小笠原さんもあたし以外にこのお店で指名してる女の子はいないから、あなたのお客さんね」

「それでも由真さんを指名してるお客さんがあれだけ多いって事ですね」

ママとして仕事をしている由真にとって、女の子にチャンスを与えてるのだろう。
それでも由真はいつだって全グループの指名本数で必ず上位にいる。
それだけ由真じゃなきゃいけないお客さんが多いのだろう。

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