【完】さつきあめ〜2nd〜

俺はいまも何も知らない。

さくらの笑顔の奥に隠された想いを、弱さを
でも、もし願いがひとつだけ叶うのだとしたらもう一度だけ笑ってくれないか?
曇りのなき笑顔を、もう一度俺にくれないか?

光の左腕には、光の誕生日にあげたちょっと無理をして買った高級ブランドの腕時計。俺のとは型違いの。
いまでは俺も光ももっと高い腕時計が買えるのだろうけど、あの頃と変わらないまま

与えられる物が同情であったとしても受け取ってきた俺が、初めて光へとあげたプレゼント。
けれど光はさくらだけは俺には譲ろうとしなかった。だから俺はさくらを無理やり光から奪うような真似をした。
けれどさくらは光とは別れて、俺と一緒にいてくれた。けれど一度だって俺を好きと言っちゃくれなかったから、無理をしているのだと気づいていた。

光は新しくオープンした双葉を任せられるようになり、由真と二人三脚でお店を大きくしていった。一途だった光は沢山の女と遊んで、それでもさくらの事をどれだけ想っていたか、俺は知っていた。
知りながら、見ない振りをした。悪魔だと、人でなしだとどれだけ言われても構わなかった。
光が小さい頃から俺に譲ってくれたゲームも、ラジコンも、その優しささえ何ひとつ俺の欲しい物ではなかったから。
本当に欲しかったのは、家族でいる事を許される証。求めても、縋り付いても、手に入れられない物ばかり。

きっと罰が下ったんだ。

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