【完】さつきあめ〜2nd〜
俺の家の、俺のベッドで眠ったように死んでしまったさくらを見つけた時は

告別式はどんよりと曇った空の切れ間から、生温い雨が降り注いでた。
泣けなかった。苦しかった。申し訳ない気持ちでいっぱいで、遺影の中で微笑むさくらを睨みつけていた。
…何で死んでしまったんだ。俺はお前を苦しめてまで縛り付けるつもりなんてひとつも無かった。
そんな俺とは対称的に光は一目もはばからずに泣き続けている姿が印象的だった。

なぁ光、俺はお前から沢山の物を与えて貰ったけど、お前の大切な物を奪う事しか出来なかったな。
お前があんな風に涙を流す姿は初めて見た。そしてこの先見る事もないだろう。

許されるのならば、あの頃に
いまなら思える。いまならお前らの幸せを願える。気づくのが大分遅すぎた。
俺は、光と笑っているさくらが好きだった、と。

時は流れて
さくらは俺が思っていたより強い人間ではなかったのだと気づいた。
そして、俺の目の前にもうひとりのさくらが現れる。
さくらの事を強い人間だとは思ってなかった。抱きしめたら崩れてしまいそうな脆さがある女。…かと思えば時たまハッとするくらい強いところがあって
さくらは俺が好きだと言ってくれた。

だからあの日’朝日’と振り返ったお前を見て、ハッとしてしまった。
雪の降りしきる夜に俺を見つめたさくらと一瞬似ていると思って、そして全然違う事に気づいてしまったんだ。
いつからこんなに綺麗になった?
いつからこんなに強くなった?
いつからお前は………
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