【完】さつきあめ〜2nd〜

「それにしてもさくらちゃんも出世したよね~いつの間にかONE嬢になっちゃうなんてさー」

「いやいや、出世とかじゃないですから~!
何か今日は無理言って同伴なんて頼んでしまってすいません!!」

「ねね、こんなやっすい居酒屋で良かったの?
ONEで働くさくらちゃんをこんな居酒屋に連れてきて、ちょっと心配なんだけど……」

「あはは~やだな~…。どこでも変わりませんよ!誰と過ごすかって事が場所なんかより大切なんだから!!
あ!ビールおかわりくださーい!!」

「ほんと…さくらちゃんはシーズンズの頃から全然変わんないよね…」

「あ!それって成長ないって事ですかぁ??」

「いやいや全然逆に誇らしいよ……」

今日の同伴相手は、シーズンズの時初めて指名してくれた安井だ。
ONEまでの道のり。そりゃあ切れたお客さんだって沢山いた。
お客さんはいつか切れる物。だからこそ沢山の出会いがあるキャバクラだと誰かが言っていた。
けれどわたしのお客さんは息の長い人が多いとも言われた。

シーズンズから通ってくれる人。
もちろんTHREEや双葉からONEへ移籍になっても切れない事が不思議なくらい沢山のお客さんがいたような気がする。
誰もが、誰かの特別でいたかった世界で、それはもちろんお客さんも同じ事で
1日に指名客の席を何度もくるくると回るキャバ嬢。だけどお客さんにとって指名してるキャバ嬢はひとりだけで、その全ての人を満足させる事はきっと出来ない。
それでも来てくれた人、ひとりひとりが今日1日は最高の日だと思ってもらえるのなら、働いていてそれほど嬉しい事はない。

指名をひとつひとつ、大切にしてきたつもりだった…。

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