【完】さつきあめ〜2nd〜

「いらっしゃいませー!!」

ホールに響く威勢の良い声。
黒服の数もそれなりにいて、安いはONEのビルに足を踏み入れた瞬間「おぉ…」と小さな声を上げた。
さっきまで人の入っていなかったフロアはまばらに客席が埋まっており、美しい女性たちが接客をしていた。

「さくら、さっそくだけど指名のお客さんが重なってるんだ。
とりあえず急いで着替えてきて!
田中さんと遠藤さんが来てる」

「遠藤社長はVIP?」

遠藤は双葉から来てくれたかなりお金のあるお客さんで
必ず来店する時はVIPルームを使いたいタイプ。
そこまで聞いて、高橋はちょっと困った顔をした。

「勿論VIPルームに入りたいって言ってきたんだけどさ…
もうVIPは2部屋とも埋まってるんだ…」

「え?!両方?!
まだ20時前だよ…?」

「あぁ…ゆりさんのお客さんが使ってる…。つーかどっちもゆりさんの同伴相手なんだけど…」

「同伴?2組共同伴なの?」

「あぁ…つーか同伴は2組じゃねぇぞ。今日は3組ゆりの同伴だな…」

「同伴が被ってるって?!どういう事?!」

「まぁ店前同伴つーやつだよ。
お客さんも納得したうえで…。ゆりさんが同伴を被らせるのはざらにある事だから…。
まぁ売り上げもポイントも上がるからね…」

ONEに出勤早々知らない世界。鈍器で頭を殴られるような衝撃だった。
そしてゆりの事。わたしの初出勤に合わせて、最初から力を抜くわけない…というわけか。

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