【完】さつきあめ〜2nd〜
3ヶ月後

3か月後。

季節は3月の終わり。

桜の蕾が芽吹いてきて、春の始まりを告げる。
とあるカフェのテラス席で、空を見上げるとまるで水色の絵の具で塗りつぶされたかのような鮮やかな青空が広がっていた。
先ほどコンビニで買ってきた雑誌を広げると、大きな風がふわりと舞い上がり、店先にある桜の花びらが舞い落ちて雑誌の上へとピンク色のハートを描いた。

開かれたページの先に、大きな大きな特集が組まれていて
カリスマキャバ嬢、ドレスショップのモデルデビューと書かれていて、そこには笑顔のゆりが写っていた。

蒼井 ゆり(皐月・在籍)

この世界に、何人のカリスマキャバ嬢がいるのだろう。
それは数えきれないほど。地方のカリスマもいれば、歌舞伎のカリスマもいる。
誰がどういった基準でそれを決めるのかなんて知らない。
けれどカリスマと名のつく彼女たちはキャバ嬢という枠にとどまらずに活躍をしている人が多い。

雑誌の中に写るゆりは、他のキャバ嬢モデルに引けを取らないほど美しくて、そんな彼女の美しさに憧れこの業界に入る子も、きっと必ずいる。

「お、綺麗な人だな」

音も立てずにわたしの後ろに周りこみ、手にしていた雑誌を覗きこむ。

「涼!!
もっおー!遅いってぇの!!」

「何だよ、仕事中だってのにいきなり呼び出したのどっちだよ!」

「久々に涼と話したくなっちゃってさ!
てゆーかすっごく似合ってる!!あはは」




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