【完】さつきあめ〜2nd〜
わたしの目の前にどかりと座り込む涼は、その笑い声に少し不機嫌になり、持っていた雑誌を奪い取った。

「つーかカフェで待ち合わせとか……
こっちが恥ずかしいつの!」

目の前の涼は作業服。
綺麗な顔立ちの男だとは昔から知っていたけど、スーツも似合ってしまえばこういった作業服も似合ってしまう。
涼は宣言通り12月いっぱいでトリガーを辞めて、今は昼間に建築会社へ就職した。
身なりなんてボロボロだし、小さな傷も絶えないけど、昼間に汗水垂らして働くのは自分の性に合っていると言った。

カフェなんか似つかわしくない今の涼の汚れた作業服を見て、わたしもそう思った。

「それにしてもゆりさんはすげぇーな」

コーヒーをすすりながら、雑誌を見つめ感心したように言った。
その言葉に、こくんと頷く。

「でも、お前もこのモデルとかいうのに誘われたんだろー?」

「こんな中に入っていったらネットで炎上しちゃう」

「そんな事ねぇだろ、お前も十分綺麗だろうが
ゆりさん今、SNSとかもめっちゃ頑張ってるじゃん!
そのうちアパレルとかカラコンとかのプロデュースとかしちゃうんかね」

「SNSのフォロー数すごいんだよ!
それに皐月もゆりさんと働きたいって面接の女の子がたえないみたい!
まぁゆりさんは元々有名なキャバ嬢だったけど、やっぱりメディアの力ってすごいなぁって思う」

「お前もいまの時代SNSくらいやりゃいいのに」

「いや」

「や、お前はそう言うと思ったけど」


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