【完】さつきあめ〜2nd〜

「俺に惚れ込んでるのはお前の方じゃねぇか」

「そうですね!!
あたしは、あなたが好きです。きっと永遠にね!」

素直にそう言ったら、朝日はゆっくりとわたしを抱き寄せた。
手に持っていた傘がゆっくりと地面に落ちて行って、ふたつ重なった。

雨はいつの間にか止んでいた。

「そんなに金はない」

「ぷっ、何それ」

「昔みたいにでかいマンションに住んでるわけじゃないし
普通のマンションに住んでる」

「いいよ」

「苦労をかけないつもりではいるけれど
お前が好きな物を好きなだけ買ってやれる男でも、もうない」

「全然いい…」

朝日の胸の中、あの頃と同じ香り
鼓動の音が少しずつ大きくなっていくのを感じた。

「ずっと笑っていられるかどうか自信もない。
なんて言っても俺はどっか欠落してるような人間だから」

「いいよ、いい…」

人生降ったり、晴れたり
それはこの雨のように

きっと嬉しくて笑っている事もあれば、泣いてしまう日もある。
悲しくなってしまう日が多くても、それでも一緒にいたいと思えるのならば
雨の日が続いてしまっても、それはさほど問題ではないと思える。


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