壊れそうなほど。
電話は、ユキのバイト先であるライブハウスからだった。

ユキがあの国道沿いのガソリンスタンドとは別に、ライブハウスでPAのバイトもしていることは、さっき教えてもらったばかりだ。

そういえば、佑介ともそのライブハウスで知り合ったらしい。

「ごめん、人いないから今から仕事行く」

「うん、頑張って」

「また明日ね、沙奈」

「うん、また明日」

また明日、か……。

大学祭はあと3日。本来なら、あと3日経てば、バンドの助っ人であるユキとは、接点がなくなるはずだったのだ。

どうしてお互いの気持ちなんか、確かめてしまったんだろう。なにもせずに会えなくなれば、いつか忘れることができたはずなのに。

あーあ。婚約のこと、早く言わなきゃ。

でも、言いたくないなあ……。

わたしは本当に最低だ。
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