私たちの六年目
その後も俺達は、終始和やかな雰囲気で食事をした。


結婚式の日取りも、俺達に全て任せると言ってくれたし。


俺の両親と梨華のご両親が顔合わせをしたら、自分達のタイミングでいつでも入籍していいと言ってくれた。


良かった……。


なんだかホッとして、すっかりリラックスしていたその時。


それまでにこやかだった梨華のお父さんが、急に真顔で俺の名前を呼んだ。


「秀哉君、一言だけどうしても言いたいことがあるんだが。

それを今、話してもいいかな」


「え……?」


俺に言いたいこと?


それって、何……?


「ちょっと、あなた?」


お父さんの腕に手を置いて、心配そうに声をかけるお母さん。


だけど、お父さんはそんなお母さんの言葉が聞こえていないかのように、俺のことを少し怖い顔で見ていた。


「梨華が秀哉君と結婚すること。

それは、とても嬉しく思っているよ。

秀哉君は大学を出ているし。

就職して真面目に仕事をして。

誰から見ても立派な青年だ。

だけどね……」


だけど……?


一体何なんだろう。


「古い人間だと思われるかもしれないが。

私はね、結婚前に子供を授かるというのが、昔から嫌いなんだよ。

だから梨華には、10代の頃からそれだけはやめてくれと何度も話していたんだ。

だけど結果的に、梨華は今で言うところの授かり婚になってしまって。

それが、やっぱりひどく腹立たしいんだよ」
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