私たちの六年目
お父さんの言葉は、俺の胸を深く突き刺していた。


どうしよう。


なんて答えたらいいんだろう。


「結婚前にそういう行為に及ぶのも、あまり感心出来ないし。

そういうことをすれば、女性が妊娠するのはわかっているだろう?

それなのに何の対策もしないなんて、娘に対してあまりにも思いやりが無さ過ぎやしないかい?」


「もう、あなたったら!

秀哉さんに、なんて失礼なことを言うの?

ごめんなさいね、秀哉さん。

この人お酒が入ると、クドクドと口うるさくなるのよ。

本当はそんなこと思ってないから、許してね」


俺に気を遣って、必死に謝ってくれるお母さん。


そんなお母さんを見ていたら、指先が震えるほど手に力が入った。


「申し訳ありませんでした」


俺はスッと立ち上がって、深く頭を下げた。


「秀哉、そんなことしなくていいから!」


そう言って梨華が俺の腕を引くけど、俺は頭を上げなかった。


「順番が逆になってしまって、申し訳ありませんでした。

確かに浅はかでした。

でも、必ず梨華さんを幸せにしますから。

どうか、お許しください……」
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