私たちの六年目
「ご親戚の結婚式ってことは、引き出物も相当な額でしょう?

それなのに、私との食事で良かったの?」


ブランドの時計とかネクタイとかベルトとか、色々選べただろうに。


「何言ってるんですか。菜穂さんと一緒に食事に行くことが僕は何よりも嬉しいんだから、これが一番有意義な使い方ですよ」


崎田君がそんなことを言うから、ボッと頬が熱くなった。


前から思っていたけど、崎田君って表現がストレートだよね。


言われるこっちは恥ずかしいけど、自分の気持ちを素直に言えるところはうらやましいな……。


「今度のお休みの19時で予約していいですか?」


「うん、いいよ」


○□ホテルはここから少し遠いし、休日の方がいいよね。


「かなり豪華なフレンチのフルコースみたいですよ。楽しみですね」


「うん、楽しみ。

だけど、何を着ていけばいいのかな?

いつも着ている仕事用のスーツじゃ浮いちゃうよね?」


「うーん、ギリギリ大丈夫とは思いますけど。

○□ホテルのディナーは、一応ドレスコードがありますからね」


「えー、どうしよう!

私いつもパンツスタイルだから、そういうところに着て行く服がないのよ」


そういう場所って、やっぱりワンピースとかの方がいいんでしょう?


それに合うバッグや靴もないし、次の休みまでに用意する時間もないよ。


どうしようと困っていたら、崎田君がにっこり笑って言った。


「大丈夫です、菜穂さん。


僕に考えがあります」
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