私たちの六年目




「ちょ、ちょっと崎田君。さっきからジロジロ見過ぎだよ」


私は今、崎田君と一緒に○□ホテルのレストランのテーブル席に座っている。


さっきから崎田君が私を食い入るように見るから、恥ずかしくて仕方がなかった。


「だって、本当に別人みたいなんですもん。

ここまで変わっちゃうと、つい見とれちゃいますよ」


別人、ね……。


確かにそうかもしれない。


こんな上品なワンピースに、それに合うバッグやハイヒール。


髪だって、きれいにセットしてもらっちゃったし。


メイクも華やかで、これならこんな高級な場所でも気後れせずに済むよね。


「まさかレンタルという手があるとは知らなかった」


「一度しか着ないのに、わざわざ買うのってバカらしいじゃないですか。

借りれば、買うよりもずっとグレードの高い服が着れますしね。

その白と黒のワンピース、菜穂さんにすごく似合ってますよ」


「本当に? えへへ、ありがとう」


これからはこんな機会があったら、借りようっと。


返す時にクリーニングしなくても良いらしいから楽チンだし。


「それにしても、すごい景色だね」


まさか窓際の席だとは思っていなかったから、本当に驚いたんだ。


「完全に日が沈んだら、もっと綺麗な夜景が見られますよ。楽しみですね。

菜穂さん、グラスを持って」


崎田君に促されて、私はグラスを手にした。


「それでは、菜穂さんの退院を祝して。

乾杯!」


こうして私達は、シャンパンで乾杯をした。
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