私たちの六年目
「秀哉、何かあったの?」


「え……?」


「なんだか顔色が悪いみたい。

秀哉の方こそ、体調が悪いんじゃないの?」


私の問いに、しばらく固まっていた秀哉だったけど。


そのうち困ったように眉毛を曲げて、フッと顔の力を緩めた。


「菜穂って、やっぱりすごいな……」


すごいって……。


つまり、図星だったってことだよね?


「大丈夫。身体はどこも悪くないから。

ちょっと疲れただけ」


「あぁ、そうか。そうだよね。

梨華のご両親と会ったら、それは緊張するよね」


「うん……」


「あと少しなんでしょう? 頑張って」


笑顔でそう言うと、急に目をキュッと細める秀哉。


しばらくして、私の腕を掴む手にジワジワと力を込め始めた。


あ……、まただ。


この感触。


人生で一番悲しかったあの日の記憶が、再び蘇る……。


「菜穂」


秀哉が、優しい声で私の名を呼ぶ。


「綺麗だな」


「え……?」


何?


今、なんて言った?


「今日の菜穂。


すげー綺麗だよ……」
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