私たちの六年目
「秀哉、すごいね」


「ん?」


「だって、一緒にいるのって梨華のご両親でしょう?

結婚へ向けて、順調に話が進んでるんだね」


ついこの前まで完全な片想いだったのが、まるで嘘みたいだよね。


「良かったね。5年以上の片想いが、やっと実って……」


この言葉を言うのだけは、つらくてダメだと思っていたけど。


今日はこの格好だからかな?


ちゃんと言えた。


良かった。


これでもう、私から秀哉に話すことは何もないや……。


「じゃあ私、もう行くね」


崎田君が、心配しているかもしれないから。


そう思って行こうとすると、秀哉が再び私の腕をグッと自分の方へと引いた。


「菜穂、身体はもう大丈夫なのか?」


秀哉にそう尋ねられて、目を見開いた。


「ど、どうしてそれを……?」


なんで私が体調を崩していたことを、秀哉が知っているの?


「あぁ、ごめん。

俺……先々週、菜穂の職場まで行ったんだ。

そうしたら、菜穂は入院してるって聞いて」


うそ……。


秀哉、私の職場に来ていたの?


もしかして、わざわざ私に謝るために?


そんなこと、別に必要なかったのに……。


「見たところ、今は大丈夫そうだな」


「うん、もう平気」


「そうか。それなら良かった……」


そう話す秀哉の顔色が、なぜかひどく悪くて。


私はそれが不思議で、コテンと首を傾げた。
< 138 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop