私たちの六年目
そんな竹下の言葉を聞いていたら、なぜか胸がチクッと痛くなった。


菜穂は以前から、竹下のような弟タイプにものすごく人気があった。


適度に叱ってくれたり、落ち込んだら励ましてくれて、疲れた時は甘やかしてくれそうだからなのだとか。


確かに、菜穂はそういう存在だろう。


菜穂と付き合える男は、きっと幸せに違いない。


あれほどしっかりしていたら、結婚してからも安心して家庭を任せられるし。


性格が穏やかでケンカにもならないから、ずっと平和な家族でいられるだろう。


その時だった。


俺のスマホにLINEのメッセージが入った。


誰かと思って見てみれば、相手は梨華だった。


『ねぇ、いつ秀哉のご両親に話すの?』


そのメッセージを見た俺は、すぐにスマホの画面をオフにした。


今すぐ返信する気にはなれない内容だったから。


頼むから、そう急かさないで欲しい。


何も考えていないわけじゃない。


ずっと、ちゃんと考えている。


だけど……。


気持ちが全然追いついてくれないんだ。


少し時間が欲しい。


一人で考える時間が。


もちろん、そうのんびりしている暇がないこともわかっている。


俺は一体、どうしたらいいんだろう……。
< 159 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop