私たちの六年目




「なぁ、日生」


「何?」


菜穂と別れると、俺と竹下は広場を後にして駅までの道をゆっくりと歩いていた。


「さっきの菜穂さんって人、すげーいいよな」


竹下の言葉に、思わず立ち止まった。


「なんつーか、仕事の出来るかっこいい女の人って感じで。

俺、ああいう頼りになりそうなお姉さんタイプがモロ好みなんだよなー」


デレッとする竹下に、俺はなぜか閉口していた。


「なぁ、日生。あの人を俺に紹介してくれ」


「は?」


「大学時代の友達なんだろう? 紹介してくれよー」


そう言って竹下は、まるで「買って」とおねだりをする子供のように、俺の腕を両手で掴んで揺り動かした。


「それは無理だ」


「はぁ? なんで?」


「菜穂には、同じ会社に彼氏がいるから」


一つ下の後輩の、崎田君が……。


「ちぇー、やっぱ彼氏持ちかあ。

まぁ、わかるよ。

すげー魅力的だもん」
< 158 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop