私たちの六年目
梨華の言葉があまりに衝撃的過ぎて。


俺は頭を鈍器で殴られたような気分だった。


あの日、赤ちゃんとさよならしたくないと泣いていた梨華があまりにかわいそうで。


何とかしてあげたいと思って結婚を申し出た。


梨華の両親が厳しいというのは、俺も以前から知っていたし。


どうにかして、梨華が両親に勘当されたりしないように手助けしてやりたくて。


だから、お父さんにあれほど厳しいことを言われても耐えたのに。


それに対して梨華からは、何のお詫びもお礼の言葉もなくて。


それがすごくショックで、悲しかったけど。


今ならわかる。


梨華はその程度のことでは、全然満足してくれないんだ……。


「悪かったよ……。

大した経済力もないのに、プロボーズなんかして……」


やっぱり俺と梨華とでは、釣り合わないんだ。


街を歩けば、人が振り返る梨華。


大学でも、美人で有名だった。


俺も憧れに似た恋心を抱いていて。


梨華が他の人を好きでも、ずっとあきらめられなかった。


居酒屋で泣いていた梨華に、思い切ってプロポーズをして。


そうしたら思いがけずOKしてもらえて。


長年の片想いが実って、俺は嬉しかったけど。


梨華にとって俺は……。


子供を無事に産むための、便利な道具でしかなかったんだ……。
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