私たちの六年目
「わぁ、すごい……」


テントの中に入ると、色とりどりの美しい花達が私を出迎えてくれた。


どうしようかな。


どんな花束にしよう。


いくつか作って、ご近所さんにもお裾分けしようかな。


「あ、これ可愛い」


この白い花、なんていう名前だったっけ?


これで真っ白い花束を作ってみようかな。


ピンクやオレンジの華やかな花束もいいけれど。


こういう無垢な色の花束も、きっと素敵。


私はそれらを一本一本手に集めていった。


その時、イベント会場を照らしていた大きな電気がパッと消えて。


各ブースの電気だけになった。


会場に流れていたBGMも止まって。


やけにシーンと静かになった。


三日間、沢山の来場者があってあんなにも盛り上がったのに。


今はもうほとんど人がいない。


いつも感じることだけど。


イベントの後って、すごく寂しい……。


早く花束を作って、家に帰ろう。


そんなことを思っていた時だった。


背後から、ザッという足音がした。


さっきのスタッフさんが戻って来たのかな?


そう思って振り返ると。


思いもよらない人が、テントの入口に立っていた。
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