私たちの六年目
「今週もお疲れー」


カチンと重なり合う5つのビールジョッキ。


金曜日の夜、行きつけの居酒屋に、いつものメンバーが集う。


「ちょっと聞いてよー。

今年入った新人の女の子が、やたら可愛くてさー。

ウチの部署の男性陣みんなデレデレしてて、あたしと扱いが全然違うし、本当に腹立つの!」


そう愚痴をこぼすのは、古賀(こが)郁未(いくみ)


大学卒業後、大手リース会社に就職した彼女。


給料もなかなか良いらしく、順調そうに見えていたけど、最近はそうでもないのだろうか。


「オレはこの頃なんかやる気が出ない。五月病かなあ」


冴えない表情でそう呟くのは、住宅総合メーカーで営業の仕事をしている城田(しろた)(まもる)


以前はガッチリした体型だったけど、この頃少し細身になって来た気がする。


「社会人二年目って、一年目とはやっぱり違うよな。

もう新人じゃないし、上から求められることも増えるし」


私の隣に座る日生(ひなせ)秀哉(しゅうや)の言葉に、大きく頷いた。


後輩の指導もしないといけないし。


一年目は許されていたことも、二年目ではもう許されなかったりするよね。


「あーあ、学生の頃に戻りたいよー」


そう言って、机に顔を伏せる郁未。


「郁未ったら、いつもそればっかりね」


郁未を見ながらクスクスと笑うのは、髪が長くて美人の吉見(よしみ)梨華(りか)


「でもホント、あの頃に戻れたらいいのになあ……」


守がボソッと呟いた後、しばらく誰も口を開かなかった。
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