私たちの六年目
自分のアパートに着いたのは、もう時計の針が10時半を回った頃だった。


菜穂といると居心地が良過ぎて、帰りたくなくなってしまうから困る……。


部屋を出る直前、菜穂に沢山勇気をもらったから。


だから、ちゃんと言える。


俺は意を決して、自分の部屋のドアを開けた。


わかっていたけど、玄関には梨華のぺたんこ靴が昨日と同じ位置に置かれていた。


ゆっくりと中に足を踏み入れると、昨日まで整然としていたはずの部屋が一晩でひどく散らかっていた。


そして窓際のベッドには、横たわる梨華の姿が……。


俺に気づいて、ムクッと起き上がる梨華。


その顔にドキッとした。


目の下にはクマが出来ていて、顔色もひどく悪く、髪もボサボサになっていたから。


梨華からの最後のLINEは1時半だったのに、朝の5時には再びLINEの履歴があったから。


ほとんど寝ていないんだろうと思う。


そこまでして執拗に連絡をして来る梨華が、なんだか怖かった。
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