私たちの六年目
「秀哉さんは、梨華さんの身体が心配かもしれないですけど。

あまり時間はないと思いますよ。

お腹の子は、どんどん大きくなっていくわけだし。

収集がつかなくなって裁判にでもなったりしたら、それこそ泥沼だ。

出来るだけ穏便に事を運ぶには、一刻も早く梨華さんのご両親に話すしかないんじゃないですか?」


「うん、私もそう思ってるよ」


思ってるんだけど……。


妊娠している女性に、精神的な負担をかけるのは怖いっていう気持ちもあって。


どうしても二の足を踏んでしまう。


「菜穂さんも、秀哉さん同様に優しいから。

そうは言っても躊躇してるんでしょう?」


相変わらず鋭い崎田君に感心しながら、私はコクンと頷いた。


「でも逆に、入院している今だからこそ、チャンスだと思いませんか?

もし万が一、身体に触るようなことがあっても、医療の体制が整っているから安心だし。

退院するのを待つより、ずっと良いと思いますよ」


崎田君の的確なアドバイスに、私は驚いていた。


こんな冷静な考えが、自分の中には全くなかったから。
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