私たちの六年目
会社を出ると、私と秀哉は自然に横並びに歩き始めた。


長く付き合って来た仲間だから、そこには何の違和感もない。


「菜穂、この後予定ある?」


まさかの質問にドキッとした。


「えーっと、予定は……。

あるような……ないような……」


飲み会に行かなくなった手前、用事があると言わないとまずくないかな?


「どっちなんだよ」


苦笑いの秀哉。


「うーん、特にない」


適当な用事なんて何も思いつかないんだから、どうしようもないよね。


「だったら、一緒に飯食おう。

菜穂の家の近くで構わないからさ」


一緒にゴハンか……。


私の最寄駅まで来てくれるのは、おそらく明日も仕事の私に気を遣ってくれているんだろう。


そこまで言ってくれてるんだし、断る理由もないか。


そんな感じで自分に言い訳をしつつ、私は秀哉と電車に乗り、駅前の定食屋に入った。


特にこれといった会話もなく普通に食事を終えてお店を出ると、途端に手持無沙汰な感じになってしまった。


えっと、これでお開きだよね?


『じゃあ、おやすみ』って言った方がいいよね?


言うタイミングを見計らっていると。


「なぁ、菜穂」


「ん?」


「今から菜穂の部屋に行ってもいい?」
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