私たちの六年目
「え……?」


思わぬ言葉に、思考と動きがフリーズした。


今、なんて言った?


「うわ、そんな戸惑った顔されたら、どうしていいかわかんなくなるんだけど」


秀哉に言われて、ハッと我に返った。


「ごめん。俺、今完全に学生の時のノリだった」


バツが悪そうに、自分の髪の毛に触れる秀哉。


「一人暮らしの女の人の部屋に、男を入れるとかダメだよな。

ごめん、本当に。

なんか名残惜しくて、一杯飲みたかったんだ。

最初からそう言えば良かった」


学生の頃、秀哉が私の部屋に来ることなんてしょっちゅうあったし。


泊まったことだってある。


秀哉はその時の感覚で言ったのに、私ったら意識し過ぎだよね。


「そんな、謝らなくていいって。

部屋が汚いから、それで一瞬“やばい”って思っただけなんだ」


本当は嘘。


実は昨日掃除をした。


でも、秀哉がさっきの私の態度を変に気にしたら嫌だもの。


「一杯飲むなら、近くに居酒屋があるけど。

せっかくここまで来たんだから、コンビニでお酒買ってウチで飲もうよ。

つまみも沢山あるよ」


「いいのか?」


「もちろん」


私の返事に、秀哉の顔がほころぶ。


秀哉断ちをしようって決めたばっかりなんだけど。


まぁ、いいよね。


ちょっと飲むくらいなら。
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