私たちの六年目
「どんなに傷ついても。

どんなにつらくても。

何事もなかったように笑って、みんなの話を聞くのが私?

そうじゃない私は、受け入れてもらえないの?」


みんなを心配したり、世話を焼いたりする頼りになるお姉ちゃん。


みんなが私に望むのは、そういう私であって。


怒ったり、悲しんで泣いたりする私は必要ないの?


「傷つくって……。

菜穂は、何に傷ついてるんだ……?

俺と梨華のこと……?」


聞かれても、私は何も答えはしなかった。


「どうして……?

菜穂はずっと、俺を励ましてくれてただろう?

やっと梨華に手が届いたのに、なんで祝福してくれないんだ?

俺が心配だから?

それは、さっきも言った通り、俺は待てるから。

今までさんざん待ったんだし、それくらい平気。

だから、俺と店に戻ろう」


違う。


違うよ、秀哉。


「無理。それは出来ない」


「……なんで?」


苦しそうに、私の腕を掴む手に力を込める秀哉。


その掴まれた腕が、ヒリヒリと痛い。


「そんなに知りたい?


だったら、教えてあげようか?」


まさか、こんな形で秀哉に伝えることになるとは思わなかった。


今まで生きてきて。


一番悲しいこんな日に……。


「私……、秀哉が好きなの……」


「え……?」


「初めて出会った時から。


今までずっと……。


秀哉のことが好きだった……」
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