ビターのちスイート
そう思った幸弘は、既読にならないことに対してあまり深くは考えてはいなかった。
明日は土曜日で休みということもあって、明日また連絡すればいいやという考えが、幸弘の頭の中を支配していた。
次の角を曲がれば家に着く、という頃になり、幸弘の胸元のスマートフォンが震える。
画面を見ると、親友の陸斗からのようだった。
「どうした? 陸斗」
『ユキ、お前さあ、最近高梨と何かなかったか?』
「杏奈と? 別に何もないけど」
突然の陸斗からの質問に、幸弘は首を傾げる。
『ならいいんだけど……。実はさ、今日高梨の店に行ってきたんだけど、ちょっと様子がおかしかったんだよな』
「様子って、杏奈のか?」
『ああ。いつも通りに見せかけて、何か違うっていうか。違和感感じてさ』
「……そういや俺、今年に入って一回も杏奈と会ってないかも」
『は? 俺と会う時間はあったのに、高梨とは会ってないのかよ』
電話の向こうから、陸斗の呆れた声が聞こえてくる。
「杏奈からも連絡なかったし、忙しいのかなと思って……」