没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます！

私が実家に着くと、ちょうどコーネリアたちが馬車から降りているところだった。


「コーネリア、お帰り」

「あっ、シエルお姉様！！」


私に気づいたコーネリアが、馬車を降りた途端走ってくる。
ドレスを着て、ヒールも履いているのによく走れるなと思う。

「こーら、危ないでしょう」

コーネリアを抱き留めながら注意するが、コーネリアはまったく聞いていないようだ。


「シエル、ちょうどいいタイミングだったな」

コーネリアに続いて馬車からは父と母が降りてくる。

「父上、母上、お疲れ様です」

いつもと違い、二人もしっかりと正装している。いや、本来貴族は常に豪奢な服を着ているのかもしれないが、我が家では無理な話だ。


「ただいま、シエル。･･･コーネリア！社交界デビューをした以上あなたは今日から大人なのです！走って抱きつくなどもってのほか。もっと自覚を持ちなさい！！」

「･･･はあーい」


帰ってきて早々母からのお説教なんて･･･全力でコーネリアに同情する。
しかし助けてはあげない。助け船を出せば次のターゲットが私になるだけだ。

それは回避したい。だって言われることはわかっている。
医者なんてやめて帰ってこい、そして結婚しろ。18歳は多くの貴族の娘が結婚する歳だ。
20歳を過ぎれば行き遅れだなんて言われる始末。
きっと来年はさらに母がうるさくなるだろう。･･･１０代最後の歳だから。


「そこまでだよ、アラベラ。さあ、中に入ろうじゃないか」

「あ、そうだ。シエルお姉様にお願いがあるの！」

「ん、わかった。あとで聞く」


お願いがあるといったコーネリアの瞳はなぜかいつも以上に輝いていた。