恋の宝石ずっと輝かせて2
 住宅が密集する場所から離れると、急に目の前にのどかな田園風景が広がる。

 このまま歩いていけば、山の麓へどんどん近づいていく。

 何かを聞き出したくて、瞳についてきてしまったが、何も成果が得られなかった。

 このまま一緒に歩くと、ただついてきているのがバレバレだ。

 瞳はそれを自分に気があるのかもと言う風に、いいように捉えてしまうから注意が必要だった。

 仁は腕を力いっぱい上にあげて伸びをした。

「ああ、いい運動になったよ。健康のためにいつも歩いてるんだけど、今日はこれで十分だ。それじゃ僕はここで……」

 これなら不自然じゃないだろうと仁はその場を去ろうとした。

「あ、あの、よかったらうちに来ませんか。もうそこなんです。折角だから冷たい飲み物でも」

 瞳はまだ仁と一緒に過ごしたいようだ。

 家に招かれるとは思わなかったが、仁も楓太の事が気になっている。

 楓太が住む場所に何かヒントがあるかもしれないと思うと、仁は素直にその申し出を受けることにした。

 自分でも少しずうずうしいような気持ちになったが、「いい選択だ」といわんばかりに楓太が振り返る。

 仁も謎解きをする探偵にでもなった気分でいい感じに事が動いていると感じていた。
 
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