恋かもしれない
「確か、出発ロビーは三階だったよね」

エスカレーターに乗って三階まで来てキョロキョロと見回して探すけれど、松崎さんの姿がない。もしかして、もう中に入ってしまったんだろうか。

このまま言いたいことが言えないまま、帰国を待つことになるの? そんなの、嫌。

焦るけれども、なにしろ空港に来ること自体初めてで、どこをどう探したらいいのか分からなくて、チェックインカウンターの傍でうろうろしてしまう。

「まさか、綾瀬さんですか?」

「え?」

「どうして、こんなところにいるんですか」

心底驚いたような声を出して、大きなトランクをコロコロさせながら松崎さんが近付いてきた。

「あ、あの、私、松崎さんに、伝えたいことが、あって、来たんです」

「俺に?」

優しい瞳に見下ろされて、緊張して頭の中が真っ白になる。

声が震えて、暗唱できていたはずの言葉がすんなり出て来ない。

「は、はい。あの、私、あの、松崎さんと知り合って、変わったって言うか、少し自信がついて、お礼が言いたくて……ありがとうございます」

「俺も、綾瀬さんと知り合えて良かったと思ってます」

うまく続きの言葉が出て来ない。暫く間が空いてしまって、松崎さんが「じゃ、俺はそろそろ手続きに行きます」と言って歩き始めたので、咄嗟に服の端っこを掴んだ。
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