恋かもしれない
「綾瀬さん、好きです」

息が苦しいくらいに抱き寄せられて、本気でそのまま連れて行かれそうで……。

「それは、あの、それは」

嬉しいけどとても困る。見上げようと思ってじたばたと身動きしたら、すっと離れた松崎さんの両手に頬を包まれて、顔が固定された。

「ですが、今は、我慢します。この可愛い唇も、帰国してからにします。覚悟して待っていてください。いいね?」

「……はい」

「じゃあ、もうそろそろ行きます」

名残惜しそうにゆっくり離れて、チェックインカウンターに向かう松崎さんの後を追う。

「あの、これ、向こうで使ってください。手袋、です」

「ありがとう、大切に使います。綾瀬さん、夜遅いから気をつけて帰ってください。本当は空港のホテルに泊って欲しいんですが……急には無理でしょうから、タクシー使ってください」

「はい、気をつけて、帰ります。松崎さんも、気をつけて……早く、帰ってきて、ください」

お顔を目に焼き付けておこうとじっと見つめていると、松崎さんは一瞬困ったような顔をしたあと、私の頬にかるくキスをしてくれた。
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