恋かもしれない
***

お疲れ様です。お先に失礼します」

「はーい。お疲れ様でーす」

定時になると、倉庫にいる美也子さんとバイトの子に挨拶をして、いつも通りバス停に向かう。

往復してるだけじゃダメ、か。そうだよね、そうしないと美也子さんみたいな運命的な出会いとか、出来ないもの。

たまには、寄りみちしていこう。

といえども、私が行けるところは、限られている。

「いらっしゃいませー」

よく寄る、駅前にある大きな書店。その名も『夢野書店』だ。

棚をちらちらと眺めて北欧雑貨の本を探す。

美也子さんから知識を得ているけれど、質問にすぐ答えられるように自分でも勉強しておこうと思うのだ。

それから、北欧の言語も少しは勉強したい。いつか、行く時の為に。

北欧雑貨の本は、コンビニによくあるような棚に収まっており、すぐに見つけられた。

けれど、スウェーデン語の本が見つからない

言語の棚を探すけれど、手の届く範囲には見当たらない。

上の方に視線を移していけば、天井近くに収まっている超分厚い本を見つけた。

厚さが十センチほどもありそうな、『スウェーデン語辞典』だ。

まさか、あれしかないの? テキストみたいなのは? それに、どうやって取ればいいの?

近くにいる店員は男性で、声がかけられない……。

「何か、ないのかな」

キョロキョロすると、角に踏み台があった。

持っている雑貨本を手近な棚に置き、目指す本の真下に踏み台を持ってきて乗り、極限まで手を伸ばした。

「と、届かないーっ」

自分の背が低いのは知っていたけれど、ここまでだなんて。

思いっ切り背伸びをしても背表紙に触れそうで触れない。

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