恋かもしれない
アパートに帰って鞄の中身を出した後、早速スマホのアプリを出す。

「えーっと、十時、夢野書店前」

ピンクハートで可愛く表示してみる。

すると、そこだけピカピカと光り輝いて見えてきた。

「私、ホントに、約束しちゃったんだ、よね」

予定を入れれば現実味が増して、さらに松崎さんの声も思い出して緊張してきた。

「どうしよう、こんなの初めて」

まさか、日曜の午前中に本を渡されるとは思ってなかった。

忙しいお方だから、夕方の隙間時間に少しだけ会って……なんて想像をしていたのに。

それが、『待ってます』だなんて、まるでデートみたい。

電話越しの声を思い出せば、そわそわしてくる。

人生初、若い男性との待ち合わせだ。

よく知らない相手だし、本を受け取るだけだけれど、どうしていいか全く分からない。

何を着ていこうか。どんな風に接すればいいのかな。何かお礼をした方がいいよね? 

中古のテキストとはいえ、無料というわけにはいかないだろう。

日曜なんてすぐだ。あと数回寝たら来てしまう、急いで準備しないと。

でもでも、何をお返しすればいいの??

検索すれば、出てくるかな。

「男性へのプレゼント、と」

検索すると、『これで決まり!』や『喜ばれるものランキング』などの文字がずらっと並ぶ。

夕食もそこそこにして、スマホの充電が切れるまで検索して過ごした。
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