恋かもしれない
支度が済んでしまうとそわそわして、いてもたってもいられなくて部屋を出る。

夏の日差しが強く照りつける中ゆっくり歩いて行くと、夢野書店には二十分前に着いてしまった。

「いくらなんでも、早すぎたかな」

流石にまだ松崎さんの姿はなくて、半分安堵しながら書店前の端っこに立つ。

シャッターの開けられた書店の中では、いそいそと開店準備をする店員さんの姿が見える。

スマホを取り出して、本を受け取った後にお誘いするカフェまでの道を、何度もチェックする。

美也子さんオススメのチーズケーキの美味しいお店、ここから歩いて五分くらいの所にあるのだ。

よし、準備は万端。あとは、お誘いの言葉を言うだけだ。

スマホのメモを呼びだして、台本を覚える俳優のように頭の中で復唱していると、視界に白いスニーカーが現れて私の前でピタリと止まった。

爪先がこっちを向いている。

「綾瀬さん?」

「――は、い?」

ドクドクと高鳴る鼓動を感じてスマホをぎゅっと握りしめ、徐々に視線を上げていくと、すみません待ちましたか?と、申し訳なさそうに言う松崎さんがいた。

紺色のサマーニットに白っぽいチノパン。水色デニムの七分ジャケットを羽織っていて、爽やかなカジュアルスタイルだ。

プライベートでは、こんな服装するんだ。
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