恋かもしれない
駅構内を通り抜けて着いたのは、立体駐車場だ。

エレベーターそばにある黒い車に近づくだけで、微かに鍵の開く音がした。

これが、松崎さんの車なんだ。

前側に『L』のロゴが付いており、車のことは詳しくないけれど高級車ぽい。

本はこの車の中にあるのかな? 

周りの景色が映り込むほどにつやつやした車体を見ていると、助手席のドアがパッと開けられた。

「どうぞ。あ、今更ですが、綾瀬さん乗り物酔いは大丈夫?」

「は、え……と、しません」

「じゃあ、遠出OKですね」

どうぞどうぞと、促されるまま乗ってシートベルトをすると、車は滑るように発進する。

遠出?? 

これからどこに行くのだろう。

というか、今更だけど車に乗っちゃって大丈夫なのだろうか。

自分の警戒心の少なさを反省していると、信号待ちになった瞬間、松崎さんの手が伸びてきて、私の手にさっと触れた。

びっくりして窓寄りに避けながら松崎さんを見ると、何故だかこちら側に身を乗り出している。

助手席の背に手を置いていて、顔がとても近い。

「あ、あ、あの、なにか?」

「綾瀬さん、指先冷たいですよ。エアコン寒くありませんか?」
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