涙の裏側    ~もう一人の私~
まぁ、そうだよねぇ。

私なんて相手にしなくても、モテそうだし。

それに、お金持ちみたいだしね。

コンシェルジュのいるマンションなんて、初めて見たよ。

「行くよ。」

もう一度誘われて、足を動かし始めた。

エレベーターを降りると、再び驚く。

あの広いフロアに玄関が2つしかないのだ。

「もしかして………マスターってお金持ち??」

「ずいぶん直球だね。
まぁ、咲ちゃんらしくて好きだけどね。
お金持ちは、実家がね。
俺は、うだつの上がらない喫茶店のマスターだからね。
毎日暇で仕方ないから、アイツの為にプリンなんて作ってるくらい。」

アイツって呼ぶのは、私がパニックを起こさない配慮。

前回『ささ』って聞いて、パニックを起こしたから。

飄々としてても、やっぱり大人だな。

感心してる私をおいて、さっさとドアを開ける。

「どうぞ。」

促されてお邪魔すると、玄関も広い!

「………………………お邪魔…………します。」

気後れしながらついて行くと

これまた広いリビングに通される。

20畳はある??

怖々近づく私が、警戒してると取ったみたいで

「ホントに何もしないよ。」って笑ってる。

「いえ、それは心配してないんですけど…………
あまりに素敵なお家だから………
仕事終わりの汚い私が入るのが…………申し訳なくて…………。」

「なんだ、そんな事。
そんなの全然気にしないで良いよ。
俺だって、仕事終わりだし。
まぁ、お客が少ないからあまり働いてないけどね。」


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