恋と眼鏡
ずいっと、祐典さまの顔が迫ってきて、僅かに背が後ろに反った。
じっと真剣に見つめる瞳に、乾いた唇で言葉を紡ぐ。

「それが、祐典さまの務めではないのですか?」

私から出た酷く震えた声を聞くと、祐典さまは手を緩めた。

「……そうですね」

泣き出しそうに眼鏡の奥の目を歪めたかと思ったら、祐典さまがゆっくりと離れた。

なぜか胸がずきずき痛む。
自分は間違えたことを言ったのだろうか。

「今日はもうおしまいです。
おやすみなさい」

「……ありがとう、ございました」

いつものように礼を言って部屋を出る。

どうして祐典さまはあんなに淋しそうに笑っていたんだろう。

考えても考えても答えは見つからず、胸はずきずきと痛み続けた。
< 16 / 30 >

この作品をシェア

pagetop