恋と眼鏡
「私は結婚する気がないと、何度言えばわかってくださるのか」

するすると私の手の上を滑る、祐典さまの手。

以前から疑問だった。
どうして祐典が結婚を嫌がるのか。

私には華族のことなどよくわからないが、高遠の当主で爵位を継いだ祐典さまは早く結婚しなければならないのではないだろうか。
孝利さまからの話以外にも、いくつも縁談の話はきていると聞く。

「祐典さまはどうして、結婚されないのですか?」

祐典さまの手が止まり、大きく目を見開いて驚いたように私の顔をじっと見つめる。

「加代は私に、結婚して欲しいのですか?」

ぎゅっと強く掴まれた手が、痛い。
けれど祐典さまは気づいていないようで、瞬きひとつせず私を見つめ続ける。

「加代は私が、誰かと結婚すればいいと?」
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