俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~


「それに、先日来店した和樹さんも、とても幸せそうに新婚生活のことを話してくださいましたよ」
「和樹さんが……?」

その言葉に、スーツを受け取ろうと差し出した手が止まった。

和樹さんが私のことを誰かに語るなんて、なんだか意外だ。
驚いて聞き返した私に、老紳士はおだやかにうなずき和樹さんが語ったという言葉を教えてくれる。

「今まで正直結婚になんて興味はなかったけれど、誰かが自分のために料理をしてくれる音を聞きながらすごす時間に、こんなに心が満たされるんだなんて知らなかったと」

そう言われ、私がキッチンで料理をしている間、ダイニングで仕事をする彼の姿を思い出す。

物音や水音の響く中でお仕事をして気が散らないか心配だったけれど、彼はあの時間をそんなふうに思っていてくれたんだ。

私が驚いて黙り込むと、老紳士は優しい表情で口を開く。

「和樹さんは幼いころにお母様を亡くして家庭的な愛情に飢えていたので、そんなささやかなひとときが新鮮でやすらげるんでしょうね」

なにかが胸に込み上げてきて、少し苦しくなる。


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