アンドロイドに眼鏡は必要か?
「やだ。
ハーキース、死なないで」

「すみません、最後の命令違反です。
許してください」

ぎくしゃくと上がったハーキースの手が、カスミの涙を拭う。
握ったその手は冷たくなっていた。

「笑って、ください。
あなたの、笑顔が、好き、でした」

無理矢理笑顔を作る。
ハーキースもぎこちなく笑顔になった。

けれどそれは人間の表情ではなく、あきらかに機械の作られたものもの。

「カスミ……ニ……デアエ……テ……ヨカッタ……」

ザラザラとした機械音で、最後はよく聞き取れなかった。
ゆっくりとハーキースの瞼が閉じられ、握った手は固まったまま動かない。

「ハーキース?
ハーキース?
ハーキース!」
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