それでも君を
代わりに聞こえたのは、衣擦れの音と、隣のベンチがわずかに沈む感覚。



そっと目を開けると、隣に腰掛けた真ちゃんの目線が、自分と同じ高さにあった。



顔を覗き込まれて、視線がぶつかる。



その瞳には怒りなんて微塵もなくて、ただただ溢れんばかりの愛おしさと温もりが宿っていた。



「…ごめんなさい」



消え入るような声で謝る私に、真ちゃんの手がそっと伸びてきて、震える私の手を包み込んだ。



「謝らなくてもいいよ」



真ちゃんの声はどこまでも優しくて、私を包み込む手からは温かい温度が伝わってくる。

< 725 / 746 >

この作品をシェア

pagetop