それでも君を
水沢の言葉に頷き、ふたりで一階の奥へと向かった。



ガラス扉を抜けると、秋の涼しい風が吹き抜けた。



少しずつ色づき始めた木々の下、小さなベンチに丸くなって座り、空を見上げている小さな背中が見えた。



……いた。




連絡を絶って一人で風に当たっていた梨央の背中は、驚くほど小さく見えた。



どれだけの恐怖と孤立感に耐えていたのかと思い、胸が締めつけられる。



「……梨央っ!」



不意に静寂を破ったのは、隣を歩いていた水沢の低く温かい声だった。

< 744 / 746 >

この作品をシェア

pagetop