残り香
「待ってるあいだ、死神になって仕事すれば現世に行けるっていうし。
あの世は全面禁煙だからな。
煙草吸いたかったし」
またくいっと眼鏡を押し上げた柴崎さんの、眼鏡の弦のかかる耳は赤くなっている。
もしかして煙草は口実で、私の様子を見に来たかったのだろうか。
そうだとしたら、嬉しい。
「今日の名簿に水城の名前が載ってるのを見つけて、担当を変わってもらったんだ。
俺の死がこんなにおまえを苦しめるなんて知らなかった。
……すまない」
再び柴崎さんがあたまを下げるから、ふるふると首を横に振る。
まだ納得したくなかったが、柴崎さんの死はしょうがないものだったのだ。
目の前で車に轢かれそうになっている子供がいれば、柴崎さんは迷いなく助けるだろう。
それが私が好きになった、柴崎真人(まこと)という人間なのだから。
それに死んでまでも柴崎さんをこんなに心配させている自分が情けない。
あの世は全面禁煙だからな。
煙草吸いたかったし」
またくいっと眼鏡を押し上げた柴崎さんの、眼鏡の弦のかかる耳は赤くなっている。
もしかして煙草は口実で、私の様子を見に来たかったのだろうか。
そうだとしたら、嬉しい。
「今日の名簿に水城の名前が載ってるのを見つけて、担当を変わってもらったんだ。
俺の死がこんなにおまえを苦しめるなんて知らなかった。
……すまない」
再び柴崎さんがあたまを下げるから、ふるふると首を横に振る。
まだ納得したくなかったが、柴崎さんの死はしょうがないものだったのだ。
目の前で車に轢かれそうになっている子供がいれば、柴崎さんは迷いなく助けるだろう。
それが私が好きになった、柴崎真人(まこと)という人間なのだから。
それに死んでまでも柴崎さんをこんなに心配させている自分が情けない。