残り香
こんなことをしていれば、柴崎さんに怒られるのはわかっていた。
わかっていた時点でやめるべきだった。

「私も心配かけて、すみませんでした」

「わかればいい」

ぽんぽん、私のあたまにふれた柴崎さんの手は、相変わらず優しい。
そっと甘えるように柴崎さんに寄りかかりながら、あとどのくらいこうしていられるのか気になった。

「柴崎さん」

「ん?」

愛おしそうに柴崎さんが私の髪を撫でる。
しかしその身体からはきらきらと細かい光の粒が静かに立ちのぼり、少しずつ消えはじめていた。

「柴崎さん!」

「ん?
ああ」

消えていく自分の身体を確認してもなお、柴崎さんは笑っている。
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