残り香
さっき一生分泣いたかというほど泣いたはずなのに、涙は再びこぼれ落ちていく。

――そして。



目が覚めると泣いていた。

「なんで……」

とても幸せでとても悲しい夢を見ていた気がする。
柴崎さんが死神になって私の元に現れる夢。

時刻を確認すると携帯の画面の表示は七時になっていた。
そろそろ出勤の準備をしなければいけないが、ここのところずっと不休で働きづめだったから、久しぶりに休んでもいいかと思う。

「ほんとに夢、だったのかな……」

夢の中でした、柴崎さんとのキスの感触が唇にある。
ほんのりと温かく柔らかいこの感触は、夢だとは思えない。
それに柴崎さんの最後の言葉がいつまでも耳に残っていた。

「あれ……?」

部屋の中で煙草のにおいがするのに気がついた。
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