昨日、彼を振りました。
「ないって言えるのか?」

右頬だけを歪ませて荒木さんが笑う。
眼鏡であの笑い方は、苦手。

勝手に速くなっていく心臓の音。
酔いが回っているのか、顔が、身体中が熱い。

「もうコンタクトはヤメだ。
三峰が眼鏡の方がいいって言ってるんだから、眼鏡にする」

「……言ってないですよ、そんなこと」

「態度に出てる」

これ以上飲んじゃダメだってわかっているのに、温くなったビールを口に運ぶ。

どきどきと速い鼓動。

荒木さんに好きだって言ってしまえば楽になれるのかな。
でも、一度振った私がそんなことを言う資格があるのかな……。


「水、飲むか」

目を開けたらタクシーの中だった。
喉が酷く渇いていたので、差し出されたペットボトルを受け取った。
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