昨日、彼を振りました。
記憶が途中で、途切れている。
荒木さんがコンタクトをやめるって言ったあたりから。

「今日はちょっと飲み過ぎだったな」

「迷惑かけて、すみませんでした」

「いや、いいよ別に」

手は指先がふれているんだかふれていないかの微妙な距離。
なにを話していいのかわからなくて黙ってしまった私に、やっぱり荒木さんも無言だった。


「ありがとうございました」

「あ、俺も降りるから」
 
私の住んでいるアパートに着くと、荒木さんは精算して一緒にタクシーを降りてきた。
このまま泊まらせて欲しい、とかだったらほんと困るんだけど。

「悪い、トイレ貸して。
俺もちょっと飲み過ぎた」

片手で拝むように荒木さんが頼んできて苦笑い。
それくらいだったらいいですよ。
< 24 / 30 >

この作品をシェア

pagetop