昨日、彼を振りました。
「なあ三峰。
言えよ、好きだって」

眼鏡の奥の瞳に見つめられ、自由の奪われた身体は言葉の一つ一つに支配されてしまう。

シュンシュンとお湯の沸く音が聞こえる。
火を止めないと、そう思うのに指先すら動かせない。

「言えよ、好きだって」

荒木さんが反対の手を伸ばして火を止めた。
あたりにはお湯が熱を持つ、チリチリという小さな音だけが響く。
喉がごくりとつばを飲み込んだ音が妙に大きく響いた。

「……好き」

「ん?」

じっと私を見つめる荒木さんの瞳は、私を完全に支配している。

言いたくない、言いたい。

せめぎ合う、私の気持ち。

けれど、支配されたあたまは勝手に、言葉を紡ぐ。

「荒木さんが、好き」
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