昨日、彼を振りました。
「おまえ、今日ちょっと飲み過ぎ。
心配なんだよ」

「……すみません。
よろしくお願いします」

「素直でよろしい」

確かにちょっと、今日は飲み過ぎ、かも。
少しあたまがふわふわする。
荒木さんが勧めてくれたワインが美味しくて、ついつい飲んじゃったもんなー。


近道で人通りの少ない公園に入った。
ひとりのときは絶対に通るなよ、そう荒木さんには言われている。
今日は一緒だからいいのかな。

「三峰(みつみね)」

急に荒木さんが立ち止まるから、私も足を止める。
街灯に照らし出される荒木さんの顔は、なぜか思い詰めているようだった。

じっと私を見下ろす、荒木さんの瞳。

アルコールで潤んでいるのか、……泣きそうなのか。
いままでこんな顔で見つめられたことがなくて、怖い。
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